祖天師

正一嗣漢張天師府正一嗣漢張天師府

教団の概要

道教は中国発祥最古の宗教教団であり、儒教や仏教と並び「三教」と称されています。二千年近く前、第一代天師張道陵(34-156)が四川で正一道(五斗米道)を創設して符籙の伝授を始め、宗門の制度を作り、符籙派と呼ばれる道教最大の宗派となりました。張道陵は後に道教三祖の「教祖」として崇敬され、「祖天師」の敬称が使われています。歴代天師は代々宗門を相続し、明朝の太祖朱元璋より「永に天下の道教を掌る事」との詔を賜る栄誉を得て、張天師の家系は孔子の家系と並ぶ中国史上重要な二大世家となりました。

第六十五代天師である張意将は2009年に教団を継承し、道教の正法を世に広めると誓い、伝統道教を創造的に発展させて現代社会の精神を備えたものとし、世界平和と幸福に資するべく国際社会に向けて道の教えを発信し続けております。

祖天師張道陵

張道陵

中国最古の宗教教団、正一道の開祖。「教祖」「祖天師」として崇敬される。

張意将

張意将

第六十五代天師、正一嗣漢張天師府教主。現代社会の精神を備えた伝統道教の在り方を提唱している。

宗名 正一嗣漢張天師府
宗派 正一道(五斗米道)符籙派
教祖 祖天師張道陵(34-156)詳細 >>
祭神 三清(元始天尊・霊宝天尊・道徳天尊)、
三官(上元大帝・中元大帝・下元大帝)など
経典 『老子道徳経』『太上感応篇』
『太上老君説常清静経』
『太上正一張府天師修真滅罪宝懺』など

教団の神様

道教は多神教であり、信仰されている神々は多種多様で来歴が曖昧である場合も多く、多くの信者は自身が何を信仰しているのか分からないままに拝んでいるという好ましくない傾向が見られ、道教を理解し難いものとしている一因となっています。

創世神話では、最高神である三清が天地・陰陽・五行を定めて「天の道」を示した無極界、神霊・時空・万物を統率する神々が世界の秩序を定めて「神の道」を示した太極界、聖王・仙者が道教を世に伝えて「人の道」を示した現世界の順に世界が形成されたと伝えております。ですので、道教の神々は大きく「天道」「神道」「人道」の神々に分けることができます。

神々は具象化できないものとされ、夜空の星々と対応させて崇拝の対象とされました。星々の位置関係を神々の関係と捉え、国家や君主の吉凶を示す天からのメッセージ「天文」を読み取る道教の占術は天文学となり、農耕文明に必要な暦を生みました。日本の天文学と暦は中国から伝えられた道教の成果の一つであり、独自の改良を施しながら江戸時代まで用いられました。

天道の神様

世界の始まりは無極界という天地陰陽が未分化の状態であり、虚無自然である「太易」、気の始まりである「太初」、形の始まりである「太始」、質の始まりである「太素」の順に形成されていきました。太易の世に元始天王が大羅天に生まれ、太初の世に元始天尊、太始の世に霊宝天尊、太素の世に道徳天尊として権化しました。これら三天尊によって天地・陰陽・五行が定まったことから、道教の最高神である「三清」として、さらに道教の三宝である「道・経・師」の象徴として宗派を問わず崇敬の対象としています。

元始天尊

元始天尊

清微天の玉清境に住み、陽・火・存在と生命の誕生を示す混元火神珠の法器を持つ。

霊宝天尊

霊宝天尊

禹余天の上清境に住み、陰・水・生命の繁栄を示す蓮花の如意の法器を持つ。

道徳天尊

道徳天尊

大赤天の太清境に住み、陰陽の掌握と道による教化を示す日月宝扇の法器を持つ。

神道の神様

天地・陰陽・五行が定まったことで世界は日月星辰・四季・方角が存在する太極界となり、万天を統率する玉皇上帝を中心とし、万星を統率する北方の紫微大帝、万霊を統率する南方の長生大帝、万神を統率する西方の天皇大帝、万物を統率する東方の青華大帝が生まれて世界の秩序を作りました。

また、天・地・水の三界を掌り、人の禍福を司る神々として天官大帝・地官大帝・水官大帝が生まれました。道教では天官大帝の誕生日である旧暦一月十五日を上元節、地官大帝の誕生日である旧暦七月十五日を中元節、水官大帝の誕生日である旧暦十月十五日を下元節として祝い、個々人の罪を天に懺悔する意を記した文書を上奏する「三官手書」という科儀(儀礼)を執り行います。焚いて煙にして天官大帝に届ける文書、焚いて灰にした後で埋めて地官大帝に届ける文書、焚いて灰にした後で川に流して水官大帝に届ける文書、合わせて三通の文書が用いられます。

天官大帝

天官大帝

上元九炁賜福天官と号す。
紫微宮に住み、天界の仙人の地位を掌握する。

地官大帝

地官大帝

中元七炁赦罪地官と号す。
北都宮に住み、世界の土地と山岳を掌握する。

水官大帝

水官大帝

下元五炁解厄水官と号す。
青華宮に住み、河川と海域の万霊を掌握する。

人道の神様

世界の秩序が定まったことで人間が生まれ、道が実践されて伝えられる現世界となり、道を実践した人の中には神仙として崇敬される者も現れました。道に基づく治世を敷いた「始祖」黄帝・道家哲学の祖「道祖」老子・正一道教団の設立者「教祖」張道陵は道教の三祖と呼ばれ、人の世に道を実践して伝えた神々として崇敬の対象とされています。

道教の歴史は人道の表れでもあります。詳細 >>

また、一定の基準に基づいて人を神として認める「封神」が行われました。『礼記』「祭法」に、「夫れ聖王の祭祀を制するや、法を民に施せば則ち之を祀り、死を以て事に勤むれば則ち之を祀り、労を以て国を定むれば則ち之を祀り、能く大菑(災)を禦(防)げば則ち之を祀り、能く大患を捍(防)げば則ち之を祀る。」とあるように、忠孝仁義などの徳を備えて十分な功徳を得た者、国家社会や民衆に貢献した先聖・先賢で、国家祭祀にふさわしい者とされています。

封神には、正一道教団による「道封」と、中国歴代皇帝による「朝封」の二種類があります。これらは古くから併存の関係にあり、道封された神々の多くが朝封され、道教祭礼・儀礼の際に祀られ、国家祭祀の対象とされました。関聖帝君(関羽)・媽祖・王爺は道封と朝封を共に受け、現代でも盛んに崇敬されている神々です。